歯周病を含む歯茎の病気は世界中の病気の中で一番万延しており、世界人口の70%が何らかの歯茎の病気に侵されているようです。
前号の「やすらぎ」では、歯周病が深刻な健康障害を引き起こし得るリスク因子となることを書きましたが、反響がけっこう大きかった為、まずは、おさらいから・・・
歯周病菌が血流に乗って全身へ及ぼすリスク
脳卒中(脳溢血):2倍
慢性呼吸器疾患:5倍
冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞):2倍
低体重児早産:7倍
糖尿病:4倍
そもそも歯周病ってご存知ですか?
歯周病は、歯茎および歯槽骨(歯を顎の中に支えている骨です)が細菌に侵される慢性の細菌感染症です。
主に細菌バイオフィルム(歯垢)が歯の全表面に蓄積することで発生し、歯を支える組織で炎症が起こります。
放置してると、歯槽骨が破壊され歯が抜けてしまいます。
歯周病の最も軽い状態を「歯肉炎」といいます。
歯肉炎になると、歯茎が赤く腫れ、出血しやすくなります。
この時点では痛みはほとんどありません。
進行した状態の歯周病を「歯周炎」といいます。
歯を支える硬軟両組織が炎症を起こし、付着の喪失が進行し、歯槽骨が破壊されてしまいます。
つまり、歯周ポケットの発生や歯茎の後退が起こるのです。
ところで、歯の喪失の原因をご存知ですか?
15〜24歳までの歯の喪失の主たる原因(70%)は虫歯ですが、40歳以上では歯周病が歯の喪失の主たる原因(80%)といわれています。
では、歯周病を促進させる危険因子をご存知ですか?
数ある中でも際立ってウルトラ・スーパー・ハイリスクな危険因子がタバコです。
ということで、今回のメインテーマは「タバコをやめよう」ということです。タバコの煙には、判っているだけで4000種類の化学物質と200種類の有害物質と37種類の発がん物質が含まれています。
受動喫煙ってご存知ですか?
同じ室内にタバコを吸う人(吸って2時間以内の人も)がいると、タバコを吸わない人もタバコの煙を吸い込むことになります。
これを受動喫煙(間接喫煙)といいます。
しかも、受動喫煙では、主流煙(喫煙者がフィルターを通して吸うタバコの煙)より多く有害物質が含まれる副流煙(タバコの火のついた部分から出る煙)を吸い込んでしまうのです。
去年、ディーゼル排ガス規制に関する都の条例ができましたが、受動喫煙による死亡率ってディーゼル排ガスによるものの17倍という報告もあります。
渋谷区には残念なことに路上喫煙の禁止条例が未だにできていません。
煙害もさることながら、第一、呼出煙(タバコを吸った人の肺から吐き出された呼気)っていわゆるヘドの臭いですからクサイですよね。
8020運動ってご存知ですか?
喫煙者は非喫煙者よりも肺がんに7倍、喉頭がんには33倍、心筋梗塞には3倍かかりやすく、歯周病には5倍かかりやすいという統計があります。
喫煙により、骨密度が粗になり、免疫力が弱まります。
その結果、歯肉付着部の崩壊、歯槽骨の吸収が促進されます。当然のことながら、喫煙者は残存歯数が少なく、入れ歯の装着率が高いようです。
8020の80は「ハチ・マル」と読み、80歳という年齢を表しています。
むろん、80歳という年齢にこだわっているのではなく、80(ハチ・マル)は高齢の象徴です。
つまり、「高齢になっても・・・」の意が込められています。20は「ニイ・マル」と読み、残っている自分の歯の数を表しています。
智歯(親知らず)を除く28本の歯のうち、20本以上自分の歯があれば、ほとんどの食物を噛みくだくことができ、おいしく食べられるところから、20本以上自分の歯を保つことを目標として掲げているのです。
その8020運動には禁煙は必要不可欠だことになります。
実際、8020を達成された方々の中に喫煙者をみたことはまだありません。
ニコチンの為害作用ってご存知ですか?
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるため、歯肉が炎症を起こしても出血が抑えられてしまい、歯周病に気付くきっかけとなるブラッシング時に於ける出血が隠されてしまい、気付かないうちに進行してしまうことが多いのです。
さらに、治療をしても非常に治りが良くありません。
ニコチンは歯根面を被っているセメント質とよく結びつく性質があるために、せっかくスケーリング(歯面に付着した有害沈着物を機械的に除去する治療)を行っても、喫煙が継続しているとこの治療の術後にニコチンが直ちに歯根面に結合してしまい、歯周治療が台無しになってしまうのです。
ニコチンは、このような局所的な為害作用と同時に全身的に個体の免疫系を傷害し、その機能を低下させます。
これらの相乗効果によって、歯周病が悪化したり術後の治癒が悪くなるのです。
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