子どもに頃から、ひどくならないうちにきちんと歯科医院を受診されていた40歳の女性の例です。
お口の中を拝見すると、とても40歳とは思えないような黒々とした金属の歯がずらり。
治療していない歯はほんのわずか。失った歯は2本。
歯周病も年齢の割りに進んでいました。
じつは、こういう女性はとても多いのです。
歯科の治療に後ろ向きだったのなら、まあ仕方ないのですが、むしろこまめに歯医者さんにかかってきたのです。
厚労省の調査でも、40歳女性の詰めたりかぶせたりしてある歯は、平均で約12本にもなります。
私たちの調査では、初診の患者さんの歯周病の進行の程度をみると、30才代でひどい歯周病(中等度と重度)の人は15%、40代歳女性では40%、50代で56%に達します。
ここから「むし歯は早く見つけて削って詰める。
歯周病はひどくなるまで放置する」というしか医療の実態が、見えてきます。
かぶせる治療が、歯周病をひどくする要因になってるケースもあります。
歯周病は、定期的に歯ぐきの細菌をきれいにすれば、ほとんどのケースで進行をストップできます。
健康を守るためには、むし歯も歯周病も原因対策が必要です。
そして現状とは正反対の「むし歯は控えめに処置して環境改善。歯周病は早期発見・定期管理」に変えましょう。
歯周病は、膿が出たり痛みが出るときはもう重症です。
そうなる前、ほとんど自覚症状のないうちに治療を始めるべきなのです。
むし歯の方は、急いで削って詰めるよりも、可能であれば歯を削ることを先のばしにして、むし歯のできやすい環境を改善することが、長い目でみると得です。
歯を守る唾液のパワーについては別のページで触れています。
細菌がつくる酸に対抗するのが唾液ですが、細菌の酸をつくるはたらきにも注目しましょう。
むし歯の原因菌は、砂糖を使ってネバネバしたノリと強い酸をつくります。
この二つのはたらきでむし歯をつくりますが、砂糖や炭水化物がなければ、むし歯菌は酸をつくれません。
糖分の入った飲食物をだらだら口にすることが一番いけません。
寝る前に食べ物を口にするのも「だらだら」にあたります。
水分補給のためにいいスポーツドリンクも糖分が多いという意味では要注意です。
乳幼児に哺乳ビンでスポーツドリンクを与えるお母さんがいますが、これはむし歯をわざとつくっているようなもの。
口中の歯がぜんぶむし歯になってしまうこともあります。
小さな子どももお年寄りも、甘いものが大好きです。
汗をかくスポーツ選手には甘い飲料が欠かせません。
たしかに砂糖は、最高のエネルギー源であり、精神的なストレスをやわらげる働きがあります。
ですから上手な甘いもののとり方を工夫しましょう。
だらだら食べない、そして間食を減らすことです。
甘くても酸をつくらない甘味料を使うことも良いでしょう。
とくに最近話題のキシリトールは、まったく酸をつくらない甘味料です。
しかもむし歯の原因菌に無駄働きをさせて数を減らしてしまうはたらきや、ネバネバをつくらせない働きがあります。最近の研究では、お母さんがキシリトールを食べつづけているだけで、子どものむし歯が予防できるという不思議なデータも出ています。
これはお母さんからむし歯菌の感染がなくなるためです。
中耳炎の予防にもなるという研究データも注目されています。
キシリトールが細菌を減らすためのようです。
キシリトールは、ネバネバを出したり酸を出したりするむし歯菌の性格を変えてしまうことも分かっています。
長時間つづけてキシリトールを食べているとむし歯菌の性格が変わってしまうというメリットもあるようです。
甘いものが好きな人には、たいへんな朗報といえるでしょう。
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